必要睡眠量は普段の生活では割り出せない

 本人にしっかりと日々の睡眠時間を記録してもらい、そのデータから必要睡眠量を割り出すことはできないのかというご質問を受けることが多いが、事はそう簡単に運ばない。残念ながら、現時点では在宅で記録した睡眠パターンから必要睡眠量を割り出す試みは成功していない。

 普段の生活では、残業やレジャー、夜勤など社会的ニーズに合わせて恣意的に睡眠時間を延長・短縮できる。このような睡眠の冗長性が多様なライフスタイルを支えているわけだが、同時に必要睡眠量の推定を困難にさせている。読者の皆さんは前回筆者が開陳した睡眠エビ天理論をご記憶だろうか。揚げ方が一定しない素人のエビ天から具の大きさを“透視”するのは困難なのだ。

 サッカーファンであれば、ワールドカップが開催されていた時期のご自分の睡眠パターンを思い出していただきたい。睡眠記録が時期や環境によって如何に大きく影響されるか思い当たるはずである。あの1カ月とその後の1カ月、同一人物のものとは思えないほど睡眠パターンは異なっているはずである。こと、ブラジル人ともなれば躁からうつにスウィッチしたような変貌ぶりであろう。また、照明や室温、湿度、ベッドパートナーの睡眠習慣などさまざまな要因の影響を受けて睡眠時間は変動する。

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