第4回 動物の協力行動を調べる画期的な「平田の装置」とは

 チンパンジーのランチタイムが終わり、人間たちも遅い昼食を取った。平田さんもぼくたちも弁当である。なにしろ最寄りのコンビニですら徒歩だと1時間とのこと。周囲に飲食店がないため途中で買ってきた。

 昼食中、また昼食後の時間もいただいて、平田さんがここに至るまでのことを教えていただいた。医学感染実験などに使われていたチンパンジーが59にんもひっそりと暮らすサンクチュアリに常駐する大学教授というのは、そうそうないポジションなのである。

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「小さい頃からチンパンジーの研究をしたかったわけではないんです。数学や物理が得意だったんで、理系で大学に行くとしたらどこかなって京都大学に入りました。京大理学部は、当時まだ入った時に専門を決めなくてもよくて、3年の時に生物にしようと決めました。1つは遺伝子の研究などが私の学生時代のちょっと前からすごく盛んになっていたのと、それから京大の生物学というと、今西錦司のような有名な先生が昔いたり、生態学的なフィールド調査とかでも有名だったので面白そうだと思って。結局、バリバリの理系というよりは人間のほう、人間の心とか思考にも興味があったというのも大きいです」

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 遺伝子研究、今西錦司、フィールドの生物学、心や思考、というキーワードを並べてみて、生物学の中でもどういった方面の研究になるかというと、なかなか難しい。もちろん理学部の生物学専攻というくくりでみればそれぞれに対応する分野があるわけだが、もっと小さなユニットとして平田さんの関心を網羅する場があった。愛知県犬山市にある霊長類研究所だ。

「生物学系の卒論で嵐山のニホンザルを観察して面白かったんで、そのまま京都に残ってフィールドワークとかでもいいかなとは思ってたんですが、いろいろ授業を受けたり、先生の話を聞いていると、霊長類研究所に新しい飼育棟が建って、放飼場も新しくなって、面白いことが始まりそうだという雰囲気だったんですよ。95年、96年くらいですね。で、実際に犬山で実習をして、チンパンジーに初めて間近で会ったんです。ニホンザルは、基本的に目を見てはいけない、目を見ると威嚇の意味になるんで。でも、チンパンジーの場合はじっと見ると見返してきたり、何となく意思が通じる気がして、これは面白い生き物だな、不思議な生き物だなと思いました。それが最終的な後押しをして、この道で行こうと思ったっていうところですかね」

本誌2014年8月号でもチンパンジーの特集「ゴンベ 森の家族たち」を掲載しています。Webでの紹介記事はこちら。チンパンジーの「家族アルバム(フォトギャラリー)」はこちらです。ぜひあわせてご覧ください。