ベジタリアンは不健康? 菜食主義の2500年

 例えば、卵、乳製品、蜂蜜など、動物由来の食品は一切食べないビーガン(完全菜食主義者)。ミルクやチーズは食べるが、卵は食べないラクトベジタリアン(乳菜食主義者)。ミルク、チーズ、卵は食べてよいラクト・オボベジタリアン(乳卵菜食主義者)。魚は食べてよいとするペスコベジタリアン(魚乳卵菜食主義者)。野菜の他に食べるのはカンガルー肉という、オーストラリア発祥のカンガタリアンなどというものまである。

ピタゴラスはベジタリアンの父

 野菜以外のものは一切(または、ほとんど)食べない人が、肉を食べる人と袂を分ったのは紀元前6世紀の古代ギリシャ時代のこと。菜食主義の父と呼ばれるピタゴラスが、肉抜きの食生活は精神を高揚させると弟子たちに説いたのが始まりだ。

 1847年に「ベジタリアン」という言葉が登場するまで、「ピタゴラスダイエット」は肉抜きの食事を意味する言葉として使われた。若き哲学者たちの穏やかな思考を促し、思索の妨げとなる動物的な欲望を鎮めることが目的だった。

 植民地時代の米国で菜食主義を支持した一人に、米国独立に貢献したベンジャミン・フランクリンがいる。菜食は健康によいと考えたこと、肉は高価だったことのほかに、食べ物を節約した金で本が買いたかったというのもその理由だった。

 フランクリンは、彼の雇用主だったサミュエル・ケイマーを誘い、3カ月にわたる菜食を実行。「私は愉快に過ごしたが、気の毒なことにケイマーはすっかり参ってしまった。この計画に飽き飽きしていた彼は勇んで歓楽街に出かけ、豚の丸焼きを注文した。私と二人の婦人が食事に招かれていたが、ケイマーは早々に運ばれてきた料理を前にして、私たちの到着を待ちきれずに全部平らげてしまった・・・」

 フランクリンはこの後間もなく、ベジタリアンの禁を破ってしまう。航海の途中、船員が料理した芳ばしいタラのフライの誘惑に負けてしまった。