第112回 “新感覚マシュマロ”のイラン菓子

ムスタファ・カザイさん。「娘はここで買ったイランのレトルトをお弁当に入れ、日本の学校に持って行ったりするの。すごく人気なんだよ」

 口をもぐもぐさせていると、脇にいたムスタファさんが、「こうしたデーツは、お葬式のときに欠かせないものなんだよ」と教えてくれる。ココナッツをまぶしたものだけでなく、種を取りクルミを挟んだもの、シナモンをまぶしたものなど様々な工夫を凝らしたデーツがふるまわれるという。その他にハルヴァという小麦粉から作ったお葬式のためのお菓子もあり、「これがなかったら、そのお葬式、おかしいって思っちゃうね」と彼。故人を想い、コーランの一節を唱えながら作るお菓子らしい。

 デーツを頬張っているうちに、ハサンさんは小さなイラン製のグラスに入れた紅茶を出してくれた。見ていると、イラン人の男性客は、机の上にあった白い角砂糖のようなものを口の中に放り込んでから、紅茶に口を付けている。え? 砂糖はお茶に溶かしてから飲むものじゃないの? すかさずムスタファさんが、「イランでは、お茶に砂糖は入れないんだ。甘いお菓子と一緒のときには、そのままストレートで飲んだりするけど、お茶だけ飲むときは、先に口に砂糖を入れるんだ。あの砂糖は角砂糖より硬くて、口の中ですぐには溶けない。だから、これをなめながらお茶を味わうんだよ」と説明してくれた。

 「ダルビッシュ」の店頭にはいつもイラン菓子が並んでいるわけではないのだが、その日はハサンさんから、「イランのお菓子が入荷したよ」という連絡を受けていた。商品棚を眺めていたら、ありました! ピスタチオが入った白いお菓子が。イランで特に人気の高いお菓子のひとつ「ギャズ」だ。

 ギャズは、紀元前にさかのぼる歴史を持ち政治文化の中心として栄えてきたイラン中部の街イスファハンの名物菓子。砂糖、卵白、ピスタチオとローズウォーターを使ったイラン版ヌガー(ソフトキャンディーの一種)だ。「ギャズとは、もともとは木の樹液のことで、これを混ぜて作ったお菓子なんだ」とムスタファさん。最近では、これを入れずに作るものも多いようだ。

「ダルビッシュ」でお客さんにふるまわれる紅茶とデーツ
左:不ぞろいな形のイランの砂糖。日本の角砂糖より少し硬い。右:これはサフラン入りの砂糖。「お腹の調子が悪いときになどにいいんですよ」とはこれを買っていたイラン人のお客さん。紅茶を飲むときに使うという