「見えない貧困」、わが国にも広がりつつある「新たな飢餓」、これをなくしていくには、どうすればよいのだろう。

 阿部さんは「より多くの人が相対的貧困の存在を認め、その実態を知ること」が最初の一歩だという。

国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩(あべ あや)社会保障応用分析研究部部長。『子どもの貧困―日本の不公平を考える』『子どもの貧困II――解決策を考える』(共に岩波新書)、『弱者の居場所がない社会――貧困・格差と社会的包摂』 (講談社現代新書)などの著書がある。(以下撮影:藤谷清美)(写真クリックで拡大)

「日本では貧困対策においても、衣食住が満たされない絶対的貧困層を前提に語られることが多いんです。相対的貧困層に対しては、働いているのに貧困に陥るのは個人の問題。子どもの貧困は親の責任で、親が解決すべき問題。なのに、それらの人々を公的に支援する必要があるのかという声が大きい」

 阿部さんが、日本の貧困問題に関心を持ったきっかけは、通勤途中に見かけるホームレスの姿だったという。それ以前に国連で途上国の開発支援に携わった経験がある阿部さんは「日本でも途上国と同じ問題がある」と思った。

 ボランティアでホームレス支援の活動に携わったこともある。しかし、支援者に投げかけられる周囲の言葉は痛烈だった。

〈好きであんな暮らしをしている人など、放っておけばいい〉

〈働く気もない怠け者をなぜ支援するのか〉

「ホームレスでさえそうです。それが仕事を持つワーキングプアとなったら、働いているのに食べていけないとは何ごとだ、当人が悪いという話になりがちです」

 そのせいもあるのだろう。わが国でワーキングプアへの対策は、失業対策や就労支援対策にとどまっている。しかし、貧困は労働問題ではなく、そもそも社会の構造に由来する問題だ。

「たとえば今、労働者の3分の1が非正規社員です。女性では2分の1を占めます。その労働力で、この国の経済が支えられているわけです。非正規労働者にワーキングプアが多いのなら、雇用を打ち切られたときの失業対策だけを講じても、根本的な解決にはつながりません」

 それでは、同じことが繰り返されるだけで、生活水準の改善にはならないからだ。

本誌2014年8月号では2050年、90億人時代に向けた特集「米国に広がる新たな飢餓」を掲載しています。Webでの紹介記事はこちら。フォトギャラリーはこちらです。ぜひあわせてご覧ください。

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