File4 日本の飢餓 阿部彩

第3回 もはや他人事ではない日本の飢餓

「見えない貧困」をなくすには、さまざまな課題もある。支援の対象をどう絞り込むか、どのような施策を優先すべきか、現物支給がよいのか、現金支給がよいのかといった問題である。これまで相対的貧困への対策がほとんどなされてこなかった日本では、新たな施策の開発を積極的に行い、実証的な検討を重ねながら施行していくことになるだろう。

 しかし、その際に大きな壁となりそうなのは、財政の問題と貧困対策に対する社会的な合意の形成である。

 いうまでもなく、日本は国家予算の半分を国債という借金で賄っている国だ。消費税は10%まで引き上げることが決まっているが、福祉関係の予算がひっ迫している状況は変わらない。

 そこにさらに貧困対策を施すとなると、財源をどう確保するかが大きな課題となる。安易に増税をすれば、一般世帯の負担を増やすことになる。

 そのような問題が背景にあるため、貧困対策について社会の合意をつくっていくのは、かなり厄介な側面がある。

「実際に、母子世帯に対する世の中の視線には、とても厳しいものがあります。母親が子どもを大学にやりたいといえば『経済的に厳しいのに、それはおかしい』といわれる。生活の苦しさをこぼせば『そもそも離婚するのがよくない』といわれ、DVに耐えられず離婚した母親に対しても『昔の母親は我慢した』という声が沸いてくるんです」

 そのような声が当たり前のように響く日本の社会で、相対的貧困層の支援に了解がとりつけることができるのか。