File4 日本の飢餓 阿部彩

第3回 もはや他人事ではない日本の飢餓

 貧困では、最も厳しい状況に置かれている母子世帯。多くの母親はパートの仕事を掛け持ちし、昼も夜も働いている。子どもと過ごす時間も少ない。

「必然として家事にかける余裕はありません。食事についても、お店を回って安くて良質な食材を選ぶようなことはできません。それは自由になる時間があってこそできることですから。ですが、母子世帯に対する現金給付は限られており、それを受給しても貧困線を越えられない。母子世帯に対するより手厚い金銭的支援は必須です」

 ほかにも教育について、奨学金は現在、返済を伴う貸与方式がほとんどだが、給付方式の奨学金制度も求められる。子どもを育てながら無理なく仕事をしていくためには、北欧諸国で定着しているワークシェアリングを導入する手もある。

 貧困をなくすために大切なのは、貧困をつくらないこと、そして世代間の貧困の連鎖を断ち切ることだ。

 貧困率を下げるには「まず明確に『貧困対策』としての公的な制度を整えることが先決だ」と阿部さんはいう。食に関していえば、米国のSNAPのような対策も必要になるだろう。併せて民間によるサポートの仕組みづくりも重要になる。

 たとえば、米国には行政がフードスタンプの支給で、低所得世帯に食料支援をするSNAPのほかに、フードバンクというボランティア団体による取り組みが全米に広く普及している。

 フードバンクとは、食品の製造工程で出る規格外品や、賞味期限が近づいて販売できなくなった食品などをメーカーや小売店から引き取り、福祉施設や低所得世帯、ホームレス支援団体などに供給する活動だ。

 まだ食べられる食品を廃棄する食品ロスを減らし、有効に利用する方策としても、この取り組みは注目されている。

 米国では1960年代に始まり、欧州諸国にも波及した。日本でも、2000年代初めにNPOによって導入され、フードバンクの運営を行っているNPOは現在では十数団体を数えるといわれる。