File4 日本の飢餓 阿部彩

第1回 日本に広がる新たな飢餓

 相対的貧困率という数字がある。OECD、EU、ユニセフなどの国際機関をはじめ、多くの先進国で公的に用いられているもので、所得を基準に求められる貧困指標である。社会において、すべての人が達成することが「当然」とされている生活さえもができないという「貧困」を測る指標として、多くの先進諸国や国際機関において取り入られている。

 これによると、2012年における日本の相対的貧困率は16.1%で、1985年の12.0%から4.1ポイント増加している。また、2010年に発表されたOECDの国際比較では(Factbook2010)、加盟30カ国中でメキシコ、トルコ、米国に次いで、日本は4番目に貧困率の高い国となっている。

 子どもの貧困率を見ると、2012年が16.3%で、これも1985年以来増加している。2012年にユニセフが発表した国際比較では、先進国35カ国中で上から9番目となる。さらに、母子世帯が大半を占める1人親世帯では、子どもの貧困率が5割を超える。

 では、そうした貧困層の生活の困窮は、どれくらい深刻なのだろう。

「相対的貧困をもう少し噛み砕いて説明しましょう。従来、貧困というと、日々の食料に困るとか、雨露をしのぐ家がない、着る服もないといった絶対的貧困の概念でとらえられていました。しかし、人が社会の構成員として生きていくには、人づきあいもしなければならないし、就職用のスーツや電話などの通信機器も必要になってきます。そのような普通の生活ができない状況を貧困とみるのが相対的貧困の考え方です」

 実際には、世帯所得をもとに国民1人1人の所得を計算し、それを上から並べて真ん中に位置する人の所得(中央値)を出し、さらにその所得の半分(貧困値)に満たない人の割合として算出されるのが相対的貧困率だ。

 つまり、社会の標準的な所得の半分しかない世帯ということになる。2012年の時点で、貧困線となる年間の手取り所得は、1人世帯では122万円となっている。

 若い世代の1人暮らしを想定してみよう。年間の手取り所得122万円を月額にすると10万円程度。それで家賃、光熱費、食費、電話代、電話通信代などを賄う。友人や職場の同僚・上司とのつき合いにもそれなりの出費を要するし、医療費が必要になることもある。

「しかし、経済的にはギリギリの状態ですから、どこを削るかとなると食費しかない。だから、標準的な生活を維持しようとすれば、その日食べる物にも困るという状況が慢性的に起こってくるのです」

 さらに、家賃が払いきれなくなれば、かつてマスコミなどで話題になった「ネットカフェ難民」のような境遇に陥る人も出てくる。