第111回 紀元前生まれの不思議な“かき氷”

来日20数年の「ジャーメ・ジャム」オーナーシェフ、モーセン・キャラバンディさん。ホテルで料理の経験を積んだという

 店の扉を開くと、カウンターの向こうにオーナーシェフ、モーセン・キャラバンディさんの顔がのぞいた。入口から延びる細い通路の向こうにこじんまりとした客席が広がり、アットホームな雰囲気が漂う。

  椅子に腰を下ろしたモーセンさんに「冷菓の発祥の地は中東なんだそうですね」と、暑い国なのにどうして?という疑問符いっぱいの顔で質問すると、彼はしょうがないなぁという風に笑い「イランは暑いだけの国じゃないからね。日本と同じように四季があるんだ」という。そ、そうなんですか。

 日本の4倍以上の国土面積を持つイラン。その緯度は、日本とほぼ同じだという。首都テヘランのある北部から北西部にかけては緑豊かな土地で、4000、5000メートル級の山がある。

 「テヘランでは冬場はかなり雪が降るんだ。東京の都心から高尾山より近いぐらいの場所に山があって、5月までスキーができる。昔は、こたつに入って暖を取ったものだよね」とモーセンさん。こたつ?と目を丸くしていると、「日本人はこたつって自分の国特有のものだと思っているよね。でも、イランにもあるんだ。昔は炭が燃料だったけど、僕の子どもの頃は電気ゴタツを使っていたな」。立て続けに現れる意外すぎる事実に探検の目的を忘れそうだ。話をお菓子に戻さねば。

 イランには紀元前よりヤフチャール(ヤフが氷、チャールが窪みの意味)と呼ばれる氷室があり、冬に出来た氷を夏まで保存する貯蔵庫として使っていた。「深い溝の脇に高い壁を作って、日が当たらないようにして氷を作るんだ。それを深く掘り下げた氷室に貯蔵するんだよ」とモーセンさんは説明する。冷菓が発達するわけだ。