第12回 高井研 私を氷衛星地球外生命探査に連れてって エンケラドゥスvsエウロパvsケレス(後編)

候補の星その3:準惑星ケレス(画像:NASA, ESA and J. Parker (Southwest Research Institute))(画像クリックで拡大)

 もちろん「エウロパの内部海の潮吹き」が本当に確実で長期安定政権なら、それは最強の探査対象である可能性はあります。またケレスの内部海の存在の可能性があるのなら、日本独自の比較的小規模な(お手軽な)惑星探査の対象としての魅力が大きいことも強く主張したいっス。

 しかし前述したように、資金的にも技術的にも太陽系探査自体のチャンスが極めて限られており、世界的にも競争の激しいことを考えると、一つには国際的な協力体制の中で極めて少ないチャンスを有効に生かすこと、そしてもう一つは国際協力の中で埋没してしまわない我が国の太陽系探査研究の独創性や独自性を際立たせてゆくという一見矛盾するような方向性を両立させていかないといけないと思うのです。

 例えば、「今すぐ日本がエウロパやケレスに地球外生命を探しに行こう」という案は、アイデアとしては国際的には先んずることができるとしても、不確定要素のあまりの大きさから計画実現可能性は限りなく小さいと言えます。つまり、エウロパやケレスの内部海の存在は「観測」で示されているのみであり、決して物的証拠があるわけではありません。また内部海の化学的特徴についても全く想像の範囲であり、「エウロパやケレスの内部海に本当に生命が存在できるのか」についての理論的予測も依然不可能な状態です。いきなり「サンプルリターンによる宇宙生命探査や!」と言っても、「アホけ?」と言われかねません。

 それに比べ、すでに国際的な協力体制の枠組みのなかで「サンプルリターン」についての具体的な探査工学的可能性やカッシーニの分析データに基づいた「生命存在可能性」が議論されており、しかも、アイデア自体の独自性も際立っているエンケラドゥス地球外生命サンプルリターン探査は、その道はとても障害の多いイバラだらけの道であるとしても、はるかに計画実現可能性に溢れた計画だと信じています。

 AKB48の曲に「スキャンダラスに行こう」というタイトルの曲があるのですが、ワタクシの今の気持ちを表現するなら、「エンケラダラスに行こう」です。つまり、予断は許さない崖っぷちではあるものの確かに一筋の光明を感じ取ることができるエンケラドゥス地球外生命サンプルリターン探査計画を前にして、あまり性急に根を詰めて考えても苦しい。「あきらめたら、そこで試合終了ですよ…」(安西先生)ですから、あきらめず、くさらず、楽しみながらちょっとずつでも前進していければいいな!

田村元秀

高井研(たかい けん)

1969年京都府生まれ。京都大学農学部で微生物の研究を始め、1997年に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究者に。「しんかい6500」で数多くの深海底を調査し、極限環境生物から地球生命の起源まで研究する。現在は同機構、深海・地殻内生物圏研究分野の分野長。2012年9月よりJAXA宇宙科学研究所客員教授を兼任し、地球外生命探査計画に参画する。著書に『生命はなぜ生まれたのか――地球生物の起源の謎に迫る 』(幻冬舎新書)『微生物ハンター、深海を行く』(イースト・プレス)など。 Webナショジオの連載『青春を深海に賭けて』はこちらからどうぞ。

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