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「たまたまの偶然だと思ってます。彼らはいずれにせよ海岸に住んでる動物で、あんまり陸の上は得意じゃないんですね。基本的には、日本のあたりが多島海化した時代に生きていた。だから、海岸にいっぱい住める場所があったんです。その当時、日本は全体的にわりと暖かかったんです。今、沖縄にしかないようなマングローブが日本全体にあった時代なので、そんなところに彼らがいっぱい住んでて、ちょうど海岸ですから、堆積物がたまりやすいので、死んだやつは骨がバラバラになる前にまとまって埋まって、化石が見つかってるんじゃないかなと」

 北米、カリフォルニア州やオレゴン州でも化石はみつかるが、そちらは海流が強く、堆積環境が全くちがったらしい。骨がばらばらになって、篩い分けられ、同じ産地から、デスモスチルスの歯ばかりが何千個も出てくる、ということがあるそうだ。

 なにやら、不思議な理由で、日本と束柱類は結ばれているようだ。

 哺乳類の中で、実に小さなグループなのだが、ある特定の時期、特定の場所で、不思議な体の仕組みをもって繁栄した者たちの化石を、世界で一番、身近に見ることができるのは幸運だ。一級の研究対象があるのだから研究者の数もそれなりに多く、様々な謎が解き明かされる時、それを一番先に知ることになるのは、我々、日本に住む者だろう。

デスモスチルスの骨格標本。(北海道大学総合博物館蔵・「太古の哺乳類展」より)(写真クリックで拡大)

国立科学博物館特別展「太古の哺乳類展」開催

2014年7月12日(土)から10月5日(日)まで、東京上野の国立科学博物館で「太古の哺乳類展」が開催されます。開館時間、休館日ほか、詳細は公式ホームページをご覧ください。

つづく

冨田幸光(とみだ ゆきみつ)

1950年、愛知県生まれ。国立科学博物館地学研究部部長。博士(Ph.D)。1973年、横浜国立大学教育学部卒業後、アリゾナ大学大学院で博士号を取得し、1981年に国立科学博物館に。2014年より現職。主に新第三紀の小型哺乳類(ウサギ類、げっ歯類など)や、古第三紀の原始的な哺乳類の系統進化や古生物地理などを研究している。『新版 絶滅哺乳類図鑑』(丸善)『DVD付 新版 恐竜』(小学館の図鑑 NEO)などの著書がある。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)、中学生になったリョウが世界を飛び回りつつ成長する姿を描いた切なくもきらめく青春物語『リョウ&ナオ』(光村図書出版)、本連載の「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 ――日本人の眠り、8つの新常識』(日経BP)など。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider

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