第98話 夜鳴き屋アンは、寝不足の元。

 避難用のテントの確認とはいえ、犬橇で泊りがけの雪上キャンプに行くというのは、かなりワクワクする冒険だ。

 そんな嬉し楽しいことに、アンを連れて行けないなんて……。

「なんでなの~???」

 もの凄い勢いでパン生地をこねくりまわしているトーニャに、私は喰らいついた。

「なんで? アンはダメなの?」

 するとトーニャは、
「楽しい旅にしたいなら、アンは連れて行かないほうがいいわよ」と言う。

「だから、なんでなの?」

 なんだかアンをのけ者扱いしているようで、私は納得がいかなかった。

 トーニャは、こねくりまわす手を一切止めずに、荒い息を吐きながら言った。

「アンはね……、知らない場所で寝ると、夜鳴きするのよ」

「夜鳴き? まるで赤ちゃんみたいだ……」

「そうよ、(はあ、はあ、)まるで赤ちゃんなのよ(はあ、はあ、)」

 息を乱しながら、トーニャはそう言うと、今度はパン生地をテーブルに、バン、バンと叩きつけはじめた。

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