検証:エネルギー基本計画2 「不可避の原則」への2つの懸念

懸念その2:発送電分離は「法的分離」で十分なのか

 第3段階の発送電分離についても懸念が残る。その代表的な方式には、(1)発電会社から送電部門全体を持ち株会社形式等により別会社化する「法的分離方式」、(2)発電会社から送電部門全体を資本関係を解消して完全分離する「所有権分離方式」、(3)発電会社に送電設備は残すがその管理・運用、指令機能は電力会社とは別の中立的な組織が担う「機能分離方式」、という3つの方式がある。

送配電部門の中立化のための「発送電分離」の類型。(出典:電力システム改革専門委員会報告書 2013年2月)(画像クリックで拡大)

 電力システム改革の中で行おうとしている発送電分離は法的分離方式となっている。しかし、これでは依然として送電部門と電力会社との資本関係は残ることになる。発送電分離のポイントはいかにして送電部門を公平中立な立場に置き中立性を確保するかという点であり、法的分離方式で果たして電力会社からの関与を100%排除できるのかということが懸念される。

 前述したように「所有権分離方式」や「機能分離方式」では、電力会社との資本関係も解消されることからよりはっきりと中立性が確保される。

 電力システムに関する改革方針では、制度の実施に向けた検討の過程で問題が生じた場合には、機能分離の方式を再検討することもあり得ることが記されている。それだけになおさら法的分離方式を選択するのであれば、具体的にどのようにして中立性を確保するのか、またどのような状況となった場合機能分離の方式を再検討するかを明確にしておくことが望まれる。

 エネルギー基本計画においても電力システム改革を断行することが記されているが、これまでの電力市場自由化のように10年経っても効果が出ないようなことがあってはならない。電力システム改革を推進するにあたっては、前述の懸念事項に十分注意を払うべきだ。

つづく

平沼光(ひらぬま ひかる)

1966年、東京都生まれ。東京財団研究員・政策プロデューサー。1990年、明治大学経営学部卒業後、日産自動車株式会社を経て、2000年、東京財団に入団。政策研究部で外交・安全保障、資源エネルギー分野のプロジェクトを担当。内閣府 日本学術会議 東日本大震災復興支援委員会 エネルギー供給問題検討分科会の委員も務める。JOGMEC(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の地球深部探査船「ちきゅう」による世界初のメタンハイドレート海洋産出試験に際し、Webナショジオでは「世界初の快挙なるか! メタンハイドレート海洋産出試験」を連載。『日本は世界1位の金属資源大国』 (講談社+α新書)『日本は世界一の環境エネルギー大国』(講談社+α新書)『原発とレアアース』(共著、日本経済新聞出版社)などの著書がある。