自分の“適正睡眠時間”を知るのは思いのほか大変だ。「8時間でも寝足りない」「5時間も寝ればすっきり」などと話している人も「その生活を1カ月続けてください」と言われればやや自信が無くなるのが普通だ。毎日8時間寝続けられるのは一般的にはかなり若い頃だけで、「目が溶けるまで寝てやる-」とベッドの中心で叫んでいた人もしばらくすると早めに目が覚めるようになる。逆に寝不足に強いと豪語しつつ日中に寝オチしている人もいるが、これは反則。「いや、そんな長時間寝てないし」と弁明されても、昼寝は夜間の睡眠に大きく影響するため、単純な足し算以上の眠気防止効果がある。実はナポレオンは午睡が得意であったともいわれている。

 我々が経験的に自覚している“適正睡眠時間”は大きく以下の3つの要因で決まる。第1は体質で決定されている必要睡眠量、第2は睡眠ニーズに関わる生活習慣、そして第3は睡眠不足に耐える力、である。これに季節変動や加齢の影響が加わり、その時、その人にとっての適正睡眠時間が決まる。

 第1の要因、必要睡眠量を調べるのはとても手間がかかる。特殊な施設内でしばらく生活してもらい、運動や食事、午睡などさまざまな環境条件を整えて睡眠時間を毎晩脳波で測定するのだ。いずれ詳しく紹介する機会があると思うが、最近我々が行った研究の結果、実は一般人の必要睡眠時間にはせいぜい2時間程度の個人差しかないことが明らかになった。我々の睡眠時間は思いのほか公平にセッティングされているらしい。では実生活でみられる6時間以上の個人差はどのように生まれてくるのであろうか。

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