第97話 どうして、耳の聞こえないアンはダメなのよ!

 罠は、食べ残されたムースの残骸の周辺に仕掛けることになった。

 オオカミは、前についた足跡を再び利用して歩く習性があるので、スネアーの輪を、足跡がつづく道に取り付けていく。

 ちょうど木と木の狭い間に足跡がついているような場所が狙い目で、先頭の1頭が掛かると、後続のオオカミたちは驚いて飛散してしまうだろうから、その周辺にも取り付ける。

 胸が痛む作業だが、私は淡々とスティーブに教わった通りに、罠を木の幹に取り付けていった。

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 考えてみれば、罠で死なせていい動物がネズミやモグラだったらOKで、オオカミやトラ、その他の可愛らしい動物だったら駄目というのも、なんだかオカシナ話だ。

 大小あれ、命は命。もちろん、どの命も奪いたくない。

 私はしみじみ、人間というのは、命を食べ、命を利用して生きているんだなあ、と思った。

 そのことに目を向けずに生きていくよりも、私はこうして命と向き合って、胸を痛めながらも生きて行くほうがいい。