「欧米諸国はトウモロコシのハイブリッド種を推奨して高収量によって生産量を増やす援助を行っていますが、トウモロコシは収穫した実を種子にすると遺伝的に分離するので、ハイブリッド種の栽培を継続するためには毎回種子を買わなければいけません。でも、イネの種籾は劣化しない。日本のコシヒカリなんて60年くらい前に植えられた品種を繰り返し使っているんです。小規模農家が圧倒的に多いウガンダで我々が普及するのには限界がありますから、その特性はぜひとも生かさねばなりません」

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“倍返し”がどこまで行われているかを確認する術はない。しかし、ウガンダのネリカの作付面積は順調に増えていて、プロジェクトが始まった2004年に8000ヘクタールほどだった耕作面積は、2008年には約5万3000ヘクタールにまで広がり、現在は7万ヘクタールほどと推定される。

「ウガンダに赴任した2004年頃は、ライスがあるレストランは少なかった。でも、いまはほとんどのレストランでライスが食べられますよ」

 これほどの広がりを見せている背景には、米が換金性の高い作物だということもある。通常、米の国際価格は1トン当たりおよそ400ドル。しかし、ウガンダに輸入される米には75%の関税がかけられるため、1トン当たり1000ドル以上になるという。レストランの例でもわかるように米の需要が増えているウガンダでは、輸入米にひっぱられて国産米の価格も上がる。

「アジアではまず自分たちの食べる分をキープして余った米を売ります。我々としては日常的に米を食べてもらいたいのですが、ウガンダでは米がまだ贅沢品であり、毎日食べる習慣が根付いていないので、ほとんど売ってしまう。それでも結婚式やお祭りのときにしか食べられなかった米が、週に1~2回食べられるようになり、現金も手に入る。彼らにしては万々歳なのです」

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 以前は現金を持っていなくても、自分たちの食べるものをつくり、余った分を売って塩や砂糖、油などに変えるくらいで生活は成り立った。しかし、経済成長が著しい今は、農村部の人間も携帯電話を持つ時代。1エーカー(0.4ヘクタール)のネリカで得られる収入は400~500ドルであり、この金で薬や自転車を買い、子どもを学校に通わせる。より豊かな生活を求めて米をつくる農家が増えているのだ。

「実は、ウガンダの低地では小規模な水稲栽培の普及も行っています。2010年には日本の無償資金協力で稲研究・研修センターが設立されました。また、2011年からはネリカと水稲栽培の2つを柱とした『コメ振興プロジェクト』を実施しています。ウガンダの人たちが稲作を始めるときは陸稲でいいですが、さらに収量を上げようとしたり、安定的・持続的にしようとしたりする場合にはやはり水稲が必要になってきますから」

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