「一般的に、陸稲は水稲に比べて穂は大きく籾の数も多いですが、穂数が少なく実が入っている籾の割合が低いという問題があります。でもネリカは従来の陸稲よりさらに穂が大きくたくさんの籾をつけます。実際、従来のアフリカの陸稲は1ヘクタール当たりの収量が1.5トン未満でしたが、ネリカは降雨が十分であれば1ヘクタール当たり3~5トンの収量ポテンシャルがあります。日本の水田が1ヘクタール当たり約5~6トンですから、同等近くの収量が期待できるのです」

 ネリカはアフリカの農業事情にぴったりなスーパーライスなのだ。そう言うと、坪井さんは「味を重視した品種ではないので、日本人からしたらスーパーライスとは言えないかもしれませんけどね」と笑うが、実際、ネリカの栽培はアフリカの多くの国々から注目されている。

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 2008年5月、横浜で第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)が開かれた。日本政府主導のもとで、国連や世界銀行、アフリカ連合委員会などが共同開催している、アフリカの開発をテーマとした国際会議だ。1993年から5年ごとに開かれ、このときはアフリカ53カ国(当時)のうち、51カ国の首脳が集結した。そこで、「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD:Coalition of African Rice Development)」が設立された。

「CARDは、アフリカ諸国で稲作を普及させて食料自給率を上げ、さらには米をお金に変える仕組みをつくっていこう、という取り組みです。JICAが中心となって、2008年から2018年の間に、アフリカでの米の生産量を1400万トンから2800万トンに増やすことを目標に支援を行っています。その要となっているのが、ネリカなのです」

 ARDに参加したのは23カ国。2つのグループに分けたうち、ウガンダやケニア、タンザニアなど先に取り組みを開始した12カ国は、2007年に1196万トンだった米の総生産量が2010年には1564万トンと30%の増産に成功している。

「奥地に住む農家が食べているものまで統計が取れないので正確な数字はわかりませんが、私の感覚からすると現在は2000万トンはいっているのではないでしょうか。かなりのスピードで普及していると思いますよ」

 アフリカで広く受け入れられつつあるネリカ。坪井さんの取り組みと栽培の現状、またネリカがアフリカにもたらす利点ついて、もう少し詳しく聞いていこう。

坪井さんは大分県の農家出身。今回は地元に伺って取材をした。(写真クリックで拡大)

つづく

中川明紀

(撮影:森山将人)

聞き手・文=中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。インタビュー記事を中心に、雑誌や電子出版物で活躍している。Webナショジオでは連載「世界魂食紀行 ソウルフード巡礼の旅」を執筆。

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