ネリカはアフリカイネのグラベリマ種とアジアイネのサティバ種という2つの陸稲を交配させてつくったイネの品種。イネには本来、水田で栽培する「水稲」と、畑で栽培する「陸稲」がある。アジアに比べて降雨量が少なく乾燥しているアフリカでは、水稲より陸稲のほうが栽培しやすい。だが、陸稲は水稲に比べて単位面積当たりの収量が少なく、地力の低下も起こしやすい。そこで、乾燥や病害虫に強いアフリカ在来種のグラベリマ種に、面積当たりの収量が多いサティバ種を掛け合わせた。それがネリカなのである。

 ネリカはこうしてつくられた品種の総称であり、改良が重ねられて、現在は水稲が60種、陸稲は18種が登録されている。ただ、おもに利用されているのは陸稲種だ。これはアフリカの風土に適していることに加えて、栽培コストや技術面も関係している。もし灌漑水田をつくるとしたら、土地を平らにして水路を引き、場合によってはダムも必要になってくるため、1ヘクタール当たり1万~1万5000ドルのコストがかかる。しかし、陸稲は畑に種を蒔けばよく、灌漑設備も必要ない。傾斜地でも栽培することができるため、栽培可能な面積を広げやすいのだ。

「砂漠地帯でも適度な水源があればつくれますし、逆に低湿地でも可能です。陸稲より水稲のほうが収量が高いことからしても、イネは水があったほうが育ちがいい。エチオピアにある青ナイル川の源流、タナ湖の周辺の土地は雨季になると水がたまってしまうため、その期間は農家はなにも作ることができませんでした。トウモロコシなどは植えても腐ってしまいますからね。でも、いまは一面にイネが植えられています。その土地の気候風土に合わせてネリカの品種を使い分けています」

ネリカは畑(左)でも低湿地(右)でも育つ。(写真提供:坪井達史)(写真クリックで拡大)

 また、栽培が簡単で生育日数が短いのも特徴だ。「極端なことを言えば、種を蒔いて水をやりさえすれば、ある程度の収量が見込めます。日本の一般的な水稲は5月頃に田植えをして10月頃に収穫しますが、ネリカは種を蒔いてから4カ月弱で収穫できます。また、在来種の陸稲と比べても1カ月以上短いんですよ」と坪井さんは言う。しかも、畑に植えるのでトウモロコシやコーヒーなど他の作物の間で栽培することもできる。

 なにより、一番のメリットは単位面積当たりの収量ポテンシャルが高いことだ。

育成日数の比較試験。左がネリカで右が在来種。ネリカのほうが1カ月以上短い。(写真提供:坪井達史)(写真クリックで拡大)

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