File3 アフリカの稲作指導 坪井達史

第1回 えっ、アフリカで米づくり? しかも畑で?

「ミスターネリカ」ことJICAコメ振興プロジェクト専門家の坪井達史さん。普段はウガンダで指導しているが、帰国の折に話を聞いた。坪井さんは『池上彰のアフリカビジネス入門』にも登場する。(以下撮影:的野弘路)(写真クリックで拡大)

「ネリカは2003年から本格的な栽培が開始された米の新品種です。“New Rice for Africa”の頭文字を取ったものであり、そこには“アフリカの食を豊かにする新しい米になるように”という願いが込められています」

 そう話すのは、JICA(国際協力機構)のコメ振興プロジェクト専門家である坪井達史さん。ネリカにいち早く着目し、ウガンダを拠点にしてアフリカ諸国で稲作の技術を指導している。2009年にはニューズウィーク誌の「世界が尊敬する日本人100人」にも選ばれた、「ミスターネリカ」の異名を持つ、ネリカ栽培の第一人者だ。

 アフリカで米を栽培するというのは、少し意外だった。しかし、近年、アフリカでは生活形態の変化から都市部を中心に米の需要が急速に伸びているという。実際、1990年頃には約800万トンだった米の消費量は、2008年には1400万トンに増えている。それでも需要に追いつかず、約700万トンをアジアから輸入しているほどだ。

「もともとアフリカにも米の在来種があり、昔から米が食べられてきました。いまでもギニアなど西アフリカでは消費が多く、1人当たり年間70~80キロほど食べています(日本は2012年で約56.4キロ)」

 アフリカ人の主食はトウモロコシやキャッサバ、バナナなどだが、米も受け入れられる土台があったということだ。実は、アジアで米の生産性向上に成功した「緑の革命」と同時期の1960年代、アフリカにも中国や台湾から水田の技術が伝えられている。しかしこのときは、アジアとは気候条件が違ううえ、政情不安が激化したこともあって、米の生産が定着するまでにはいたらなかった。そのため、需要が供給に追いつかないのである。

「現在、アフリカの稲作面積は1000万ヘクタールと世界の稲作面積の6%しかなく、生産量の2680万トンは世界の3.7%でしかありません。でもネリカにはいままで普及を妨げていたさまざまな問題をクリアできるポテンシャルがあるのです」

スーダンで指導中の坪井さん。アフリカでは昔から米が食べられてきたという。(写真提供:坪井達史)(写真クリックで拡大)