第110回 誕生日にはケーキより主役? ブラジルの国民菓子

 FIFAワールドカップの熱戦が繰り広げられている。開幕戦では、主催国ブラジルがクロアチアにまさかのオウンゴールから3‐1で逆転勝利。ブラジルのユニフォームで黄色く染まったスタジアムが嵐のような歓喜に沸いた。

 国を歓喜に包む「国技」、サッカーのボールを模したわけではないが、ブラジルにはまあるいボールのような「国民的お菓子」がある。「ブリガデイロ」だ。コンデンスミルク、ココアパウダー、バターを混ぜ合わせボール状に形づくったチョコレート菓子で、表面にチョコレートスプレーをまぶすのがお約束。

 ブリガデイロという名前は、空軍司令官(ブリガデイロ、准将の意味)だった20世紀のブラジルの政治家エドゥアルド・ゴメスにちなんだもの。1940年代に大統領選に出馬したゴメスの夫人がこのお菓子を発案、資金集めのパーティーで振る舞われたのだ。ゴメス氏は2度大統領選に打って出たが、いずれも落選。けれど、チョコレート菓子は残り人々の日常に刻まれ、その名は広く世界に知られるようになった。

 このブリガデイロ、ブラジルの誕生日の食卓には絶対、欠かせないお菓子だという。

 「たくさん作って、バースデーケーキの周りにいっぱい飾り付けるんです。ブリガデイロは、ケーキを切る前からお母さんが『食べていいよ』といってくれるから、子どもたちはみんな大喜びで手を伸ばすんですよ」。こう説明するのは、前回に引き続き登場のブラジル料理シェフ、沖野リカルドさん。歓声と共に小さな手が一斉にブリガデイロに伸びる様子が浮かんでくる。「1人5、6個食べるから、100個ぐらい作るんです」。国土の大きさに比例しているわけじゃないだろうが、「たくさん」のスケールの大きさにびっくりだ。

リカルドさんのブリガデイロ。味わいを軽くするため、彼はバターではなくマーガリンを使う。このチョコレート、南部では、「ネグリーニョ」と呼ばれることもある