朝もやの立ちこめる湖。コケに埋もれゆくシラカバ。松の幹に穴をあけて営巣するキツツキ。池に集まってくるイトトンボ……。

 ホームステッドでの撮影を続けるうち、写真はすこしずつたまっていきました。

 でも、ぼくが心を動かされたのは、何か被写体を見つけることができたときだけではありません。

 毎日、湖のほとりで目覚め、半径1キロにも満たない範囲を、何度もいったりきたりしながら、自然を見つめ続けたおかげなのでしょう。

 たとえ同じ場所であっても、その日の天気によって、見え方がまったく違うことに気がつき、それを確認するのが日々の楽しみでした。

鋭く空を刻む針葉樹のシルエット。深い森の向こうに、いったいどんな自然の物語が隠されているのだろう。ホームステッドで最後に撮影したときの1枚で、初めての写真絵本『ノースウッズの森で』の最初のページにも使用した。(写真クリックで拡大)

 晴れの日は、太陽の位置によって光の角度や色がめまぐるしく変わり、影の部分ができることによって、ものの輪郭がくっきりと浮かび上がります。

 くもりの日は、光がやわらかく、苔むした地面を見つめていると、晴れた日に影になっていた部分までもがよく見え、繊細な質感がよりきめ細やかに感じられました。

 そして、雨の日は、空から落ちてきた水滴に洗われ、木々の葉も、地面の岩も、まるでニスでコーティングしたかのように、しっとりとつややかな色合いを見せてくれるのです。

 そうした変化が、写真の仕上がりにどう影響するのかまでは、わかりません。

 それを作品に活かせるようになるには、もっともっと経験が必要なことでしょう。

 でも、もともとは、自然をより深く感じられるようになりたいと思って始めた写真です。

 これまで見過ごしてきた、光や色の変化を感じ取れるようになったことは、それだけでも、カメラを手にしてよかったと思える、嬉しいことでした。

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