鋭敏なのは嗅覚だけじゃない! 犬たちの超感覚

暗闇でもものを見ることができる視覚

 一般にイヌの目は色を感じることはできないと言われているが、これには目の奥にある網膜を構成する視細胞が関わっている。

 目に射し込んだ光が神経を介して脳に伝えられるには、網膜で神経に伝わる電気信号に変換される必要がある。その役割を担っているのは網膜を構成する視細胞であり、視細胞は大きく桿体(かんたい)細胞と錐体(すいたい)細胞に分けられる。桿体細胞が微弱な光を感じるのに対して、錐体細胞は光の波長の違い、つまり、色を感じているのだが、イヌの網膜には錐体細胞が少なく、感じられる色は限られる。そのため、イヌは緑と赤の区別が苦手で、緑は薄い黄色に、赤は濃い黄色に見えると考えられている。

 見える色が限られるとはいえ、色を感じる錐体細胞が少ない分、微弱な光でも感じることができる桿体細胞が多くなっている。その上、網膜の裏には光を反射するタペタム(「輝膜」ともいう)と呼ばれる層があって、網膜がすり抜けた光が再び視細胞に戻る構造になっている。このおかげで人間には暗闇にしか感じられないようなところでもものを見ることができ、闇夜に乗じて獲物に近づくことができるのだ。

人間よりも鈍感なイヌの味覚

 このようにイヌは優れた嗅覚、聴覚、視覚を持っている一方、味覚については人間よりも鈍いようだ。

 食べ物の味は舌にある「味蕾」に食べ物に含まれる化学物質が達することで感じられるため、味覚の鋭敏さは味蕾の数に左右される。他の動物に比べてイヌの味蕾は少なく、人間の味蕾が約9000個あるのに対して、イヌの味蕾は1700個程度しかないことが明らかになっている。

 イヌは何でも食べる雑食性だと考えられているが、食肉目に分類されていることからもわかる通り、元々は肉食性だった。肉しか食べなければ、複雑な味を感じ分ける必要がなく、人間に比べて味蕾の数は少なくなっているのだろう。

 ただし、イヌの味蕾の多くは甘味を感じるもので、肉に含まれるシステイン、プロリン、リジンといった甘いアミノ酸の味はしっかり感じ取れるようになっている。味蕾の数では人間より少なくなっているといっても、これは肉食を反映したものであり、生きていくのに必要な味覚はしっかり備わっているのだ。

(文・斉藤勝司)