けれど、スティーブやトーニャたち森の住民は、お風呂に入るという習慣がない。

 水と言えば、雨水を溜めて生活水にしなければならない森の生活では、風呂に入るなど、贅沢な行為なのである。

 だから、ここでのお風呂はサウナに入って、石鹸で体を洗って、上がり湯をするだけである。

 せめて服だけでもニオイを消したいところだが、洗っても洗濯洗剤のフローラルな香りになるだけだからと、服に関しては、スプルースのニオイを付けたボロ布を身につけて行くことになった。

 そしてスティーブは、もう2、3枚のボロ雑巾を見つけてきて、鍋の中に入れた。

 もはやスプルース鍋の中は、ボロ雑巾にボロ軍手、ボロ靴下が加わって、かなりのモノになってきた。

 もう誰も、「美味しそうなスープになってきたね」などと冗談を言わない。

 トーニャは、その恐ろしい寸胴鍋の中をかき回しながら、なぜか嬉しそうな顔をしている。

「何匹捕まえられるかな~? うふふ。2匹かな? 3匹かな?」

 彼女はすでに、捕らぬ狸の皮算用といったところだ。

「オオカミが罠にかかると嬉しい?」

 私には、その微笑が不思議だった。

 けれどトーニャは、迷い無く言う。

「そりゃ~嬉しいわよ。毛皮は臨時収入になるわ」

「でもさ……」

 実は私には、少し疑問に思っていたことがあった。

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