それにしても、具がスプルースとワイヤーというのは、なんとも味気ないではないか。

 と、スティーブの冗談に付き合っていると、トーニャが、ふっと、何か気付いたような顔をして言った。

「これで罠のニオイは消えるとして……、私たちのニオイは、いいのかしら?」

 確かに!

 罠はOKだけれど、明日、罠を仕掛けに行く私たちが、人間臭かったら、元も子もない。

 だからと言って、私たちがスプルース鍋の中に入るわけにはいかないから、ここはスプルース風呂でも沸かすか?

 と身構えていると、スティーブが、「忘れてた」と頭を掻いた。

 そして、「これも入れなくちゃね」と持ってきたのは、倉庫の隅に投げ捨ててあった古い軍手と脱ぎ捨てた靴下、ボロ雑巾。

 それを全部鍋のなかに放り込むと、もはやこの世の物とは思えないような、恐ろしい物体を製造しているような気分になってきた。

「体のニオイはいいの?」

 私は聞いた。

 実は、私はヨモギ風呂や薬草風呂がちょっと苦手なのだが、この際、スプルース風呂でも何でも入ってやろうじゃあないか!

 と全身スプルースパフューム人間になる覚悟を決めていたのだ。

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