じっくりと煮込んだスプルースの出し汁は、もはやこの世のものとは思えないほどの、強烈な匂いを放っていた。

「うえ!」

「うえ!」

 えずきながら私はスティーブの動向を見ていると、

「さて、そろそろメインの具をいれるよ」

 と言って彼は、オオカミの罠の束を、鍋の中にどさりと入れて、ぐっと手で押し込んだ。

 あとは、このまま朝まで薪ストーブの上にかけておいて、煮詰めて完成だという。

 スティーブは、ニコリと微笑んで言った。

「オオカミ罠スープのレシピ、簡単だろ?」

「なるほど~」

 私は感心した。

 これは、罠に付いている人間のニオイや保管していた倉庫のニオイなどを消すためのものだったのだ。

 代わりにスプルースの強烈なニオイが付着するため、嗅覚のいいオオカミたちに気付かれることはない。

 まあ、実は察しはついていたのだけれど、これが本当に、私たちの朝食に出てきたらオモシロイ。

 真心さえこもっていれば、出てきたものはなんでも食べる私は、きっとスプーン1杯ぐらいは、口に入れてみたことだろう。

 そして、顔を緑色にして、気絶するに違いない。

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