第4回 大切な「撮らない時間」

 最初はいろいろな方から話を聞いていたのですが、その過程でボンへイのお母さんに出会いました。彼女は離婚した夫からHIVに感染しました。ボンヘイは当時8歳。生まれつき耳が聞こえず、言葉も話せません。

 母親は2008年にエイズを発症してから仕事を辞め、一家の家計はボンヘイの祖母が1日1ドルの稼ぎで支えていました。

 私はこの家族が、どのようにHIV・エイズの問題と向き合っているのかを知りたくて、家族の生活を追うことにしました。

――パキスタンの場合も、詳細な実態を知りたいというのが理由ですか。

 そうです。パキスタンでは、結婚や交際を断られたり、浮気を疑われた女性が、相手の男やその近親者から報復として顔に硫酸をかけられる事件が後を絶たず、増加する傾向にあります。このときも、被害を受けた女性たちの日常が知りたくて取材に出ました。

学校に行くのを嫌がるボンヘイを持ち上げ、自転車に乗せる祖母(撮影:林典子)
聾学校での授業に集中できなくなり、席を離れて窓の格子に毛糸を巻き付けて遊び始めるボンヘイ(撮影:林典子)