第4回 大切な「撮らない時間」

――そのアプローチ法だと、かなり長い取材期間を必要としますね。

 そうですね。だんだん長くなってきています。

――ガンビアから帰国して2年後の2009年、林さんはカンボジアでHIV感染者を取材します。母子感染で聾唖の少年、ボンヘイを追ったフォトストーリーが、フォトジャーナリストとしての第一歩ですね。次いで、取り組んだのがパキスタンで、硫酸の被害に遭う女性たちの姿を追ったフォトストーリー。テーマはどのようにして決めているのですか。

 何となく、心にひっかかっている問題や事件、私自身がもっと知りたいと思ったテーマを拾い上げるようなかたちです。

 たとえば、カンボジアのHIV感染者の問題は、前から気にかけていたことです。1990年代にカンボジアではエイズの発症者が急増しました。その後、HIV感染者は減り続けましたが、一方で母子感染によるHIV感染者は年々増えています。

 これは、カンボジアが直面している深刻な社会問題ですが、これも「キルギスの誘拐結婚」と同じく、報告書などの記述ではその実態がよくつかめないので取材に入ることにしたのです。

母子感染でHIVに感染した少年ボンヘイ(8歳)。生まれつき耳が聞こえず、左目を失明している(撮影:林典子)
意思疎通が難しいために困惑した表情を浮かべるボンヘイ(撮影:林典子)