第2回 自問を繰り返しながらの取材
――「キルギスの誘拐結婚」の写真を見ていて、少し気になったことがあります。林さんは、加害者の側にいて誘拐にも同行していますね。共犯にならないのですか。
私も現場でそのことは考えていました。誘拐の現場に立ち会っていながら、なぜその女性を助けようとしなかったのか。写真を発表したら、そういう意見も出るだろうとも予想しました。
取材者が加害者側に立って取材することの意味については、取材中に自問を繰り返していました。しかし、それは、そのときの状況や取材の目的によって変わってくるだろうと考えたのです。
先にも言いましたが、私は初めて誘拐に立ち会う以前の2カ月間に、いろいろな人から話を聞き、誘拐されても結婚を拒絶し続ければ家に帰ることができると知りました。そこで、女性が結婚を拒み続け、帰ることができそうな状況ならば、私は介入せずにおこう。むしろ、その場で起きていることをつぶさに見て、写真に記録しようと思いました。
しかし、彼女の意思が尊重されずに、無理やり結婚式を挙げられたり、レイプされたりする恐れがあったら介入しようと思っていました。結婚を拒み続けながら、強引に挙式され、レイプされた女性の話も聞いていましたから。その女性は、両親が自宅に連れ帰りましたが、2日後に自殺しました。