――キルギスでは、誘拐結婚は犯罪にならないのですか。

 誘拐結婚が法律で禁じられたのは1994年のことです。その後、2013年に法律が改正され、最高で懲役3年だった刑罰が10年に延びました。私が取材したのは改正の前年でしたから、その賛否をめぐる論議が、メディアで盛んに取り上げられていました。

 誘拐結婚にもいろいろあって、恋愛関係にある女性との結婚を急いだとか、女性の両親が結婚を許してくれないからなど、駆け落ちに近い形で両者合意で誘拐結婚に踏み切る場合もあります。

 しかし、2、3回会った程度の相手や、面識のない相手を強引に誘拐するケースのほうが多いんです。

 かつてキルギスでは伝統として親が結婚相手を決めていました。しかし本当に好きな相手と一緒になりたいという意識が生まれ、結果としてお互いに納得した上での誘拐結婚が増加したのです。また古老の夫婦に誘拐結婚について聞くと、以前はほとんど会ったこともない女性を強引にさらってくるようなものではなかったそうです。両者の合意を前提としていたのです。

 ところが、年齢が下って50代、60代から下の世代になると、合意のない暴力的な誘拐で結婚した夫婦が増えるんです。

 キルギスの誘拐結婚に詳しい米国フィラデルフィア大学のラッセル・クラインバック名誉教授は、強引に女性を連れ去る今のかたちの誘拐結婚が増えたのは20世紀に入ってからだと言っています。

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