アスパラガスは19世紀のバイアグラだった

 19世紀のフランスでは、結婚式の夜に花婿が初夜に備えて3品のアスパラガス料理を食べるという習慣があった。アスパラガスのバイアグラ効果については科学的に証明されているわけではないが、ビタミンA、C、K、さらに葉酸を豊富に含む優れた食品であることは間違いない。そして何より、その味は多くの人を虜にする。

 古代ローマを率いたユリウス・カエサルもその1人。シンプルなオリーブオイルでの調理を好んだが、調理法にはこだわりがあったようだ。ある宴席で、アスパラガスの新芽を香りの強いハーブで和えた料理を出されたが、カエサルはこれを気に入らず、がっかりしたと記録に残されている。

 初代ローマ皇帝アウグストゥスの時代になると、特別に仕立てた船団「アスパラガス艦隊」で産地から直送。新鮮なアスパラガスをアルデンテに茹でて食べたらしい。当時ローマで流行した言い回し、「アスパラガスを茹でるよりも素早く」とは、まさしく「全速力で」という意味だ。

ベルサイユ宮殿で6000本のアスパラ栽培

 熱心な園芸家として知られるフランス国王ルイ14世は、ベルサイユ宮殿の菜園に温床を作らせ、6000本のアスパラガスの苗を栽培した。おかげで毎年12月早々にはアスパラガスが宮廷の食卓を賑わした。

 ルイ14世の曾孫、ルイ15世もまた、王家のアスパラガス畑を受け継ぎ、存分に味わった。王の愛人として権勢を振るったポンパドール夫人のレシピが残されている。使われたのは「オランダ人の」アスパラガスと呼ばれていたホワイトアスパラガス。穂先がほんのりと紫色に染まっている。これにバターたっぷりのソースをかけた一皿だ。紫はポンパドール夫人が身につけた下着の色だったとも言われている。