フェルナンダさんは日本生まれの20歳。父親がブラジル人、母親が日系人で、毎年ブラジルの祖父母のもとに行くという。将来の夢は通訳士だそうだ

 「具材が変わったりしないんですか」と聞くと、地方によって黒豆を使ったり、その日の気分でベーコンを豚肉にすることはあるが、基本は同じだという。「ただ、土日はフェイジョアーダをつくることもあります。簡単に言うと肉入りのフェイジョンです」とマルコさん。そういえば、イベントで会ったオリベラさんも「フェイジョアーダ」の話をしていた。フェイジョンの豪華版ということなので、フェイジョアーダも食べてみることにした。

 運ばれてきたフェイジョアーダは黒かった。こちらは黒い豆を使うのだそうだ。そして、肉の塊がゴロゴロと入っている。「味付けはフェイジョンと同じですが、豚の肉や耳、尻尾などいろいろな部位を入れます。ソーセージやベーコンも入れて肉がやわらかくなるまで煮込む。牛肉を使うこともありますよ」とマルコさん。これにヴィナグレッチというトマト、玉ねぎ、キュウリと酢を混ぜたソースにファリーニャというキャッサバの粉、それからケールのニンニク炒めを一緒に混ぜて食べるという。

 豆はフェイジョンのものよりやや固い。汁もサラリとしているが、肉はやわらかく、ソーセージの味はしっかりと濃いめで、それらのうま味が存分に引き出されている。噛むほどに味に奥行きが生まれるのだ。塩やニンニクの味付けが日本人には強い気もするが、ヴィナグレッチのさっぱり感やケールの青々とした風味が味に変化を与えて飽きさせない。そして、ごはんに実に合うのである。

 フェイジョン、フェイジョアーダを手際よく混ぜてくれたフェルナンダさんは、「ブラジル人は母親の手伝いをしながら料理を覚えます。フェイジョンがつくれないとお嫁にいけないと言われているんですよ」と微笑む。

 ロシアのボルシチ(第18回参照)もそうだった。ソウルフードはつくれないと嫁にいけない節がある。かつては日本でも味噌汁を上手につくれることは嫁ぐために大事なことだった(今もそうかもしれないが……)。「私も、フェイジョンはお味噌汁みたいなものだと思います」とフェルナンダさん。「では、フェイジョアーダは?」と聞くと、「カレーライスのようなものかな。たまにしか食べないけど、出てきたときはうれしいから」と言う。

肉がゴロゴロ入ったボリューム満点のフェイジョアーダ。後ろにある(右から)ケールのニンニク炒め、ヴィナグレッチ、ファリーニャを一緒に混ぜて食べる
これでひとり分。フェルナンダさんはケールをたくさん入れるのが好きだそうだ。地方によって食べ方もいろいろあり、炒めたキャベツとオレンジを添えて食べるところも

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