新石器時代から食べられ、セクハラ用語にもなっている人気料理

 19世紀初頭、アメリカの第3代大統領トマス・ジェファーソンは、パンケーキが好物だった。デザート作りの腕を見込まれた大統領官邸の給仕長エティエンヌ・ルメールが伝えたのは、「フランス風パンケーキ」のレシピ。熱したフライパンに少量の生地を注ぎ入れて焼くというもので、今で言うならクレープだ。現在一般的なふっくらしたパンケーキは、ジェファーソンの時代にグリドルケーキと呼ばれていた。

パンケーキみたいに平べったい?

 クレープやグリドルケーキほか、パンケーキの仲間は多種多様だが、共通する特徴はどれも平べったいということだ。

 「パンケーキみたいに平べったい」

 オックスフォード英語大辞典によると、これは少なくとも1611年から使われている比喩表現だ。胸が小さい女性をからかったり、ポーランドや、カナダの大氷原や、カンザス州などの、平坦で単調な地形をたとえるときに使われる。

 2003年、このお馴染みのフレーズから、ある試みを思いついた人物がいた。アメリカ中西部横断の退屈な旅から帰ってきたばかりの地理学者3人組だ。
 彼らのもくろみは、カンザス州がどれだけ平坦かをパンケーキと比較して測定しようというものだった。まず、地元のパンケーキ店でありふれたパンケーキを買ってきて、画像処理技術とレーザー顕微鏡を駆使して地形断面図を作成。カンザス州については米国地質調査所のデータを使用して同様の断面図を作成した。

 大真面目な実験結果は科学誌『Annals of Improbable Research(風変わりな研究の年報)』に発表され、パンケーキは平坦だが、カンザスはもっと平坦だということが示された。数学的に、完璧に平坦なテーブル面を示す数値を1.000とした場合、カンザスはほとんど真っ平らな0.9997。パンケーキはそれより起伏があることを示す0.957だった。

 ところが今年3月、2人のカンザス出身の地理学者がこれに異を唱えた。カンザスはパンケーキよりは平坦かもしれないが、アメリカ大陸にはもっと平らな場所だってある、と。2人の計算結果によれば、アメリカでもっとも平坦なのはフロリダ州で、次にイリノイ、ノースダコタ・・・と続くことがわかった。

 いずれにしろ、パンケーキがさほど平坦でないのなら、いっそのこと比喩表現も16世紀風に戻してみたらどうだろう。「ヒラメのように平たい」と。

(文=Rebecca Rupp / 訳=小野智子)