たとえば、イカは明るいところに集まる習性があるため、イカ漁は暗闇の中でライトを点けておびきよせる漁法を用いる。日本の漁業者はいつもより不漁だと、燃料が補助されるのをいいことにエンジンの大きな船で発電力を高め、ライトを何倍もの強さにしておびきよせる。そうするとイカは強い光のもとへ集中してしまうから、周りの船もこぞって光を強くする。投資が害になり、乱獲を招く。

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「無駄な競争ですよ。ITQを取り入れていれば10倍の光を使って一気に漁をしようとする人も、普段と変わらない光でのんびり漁をする人も、漁獲枠が決まっていますから、経費や販売価格を考えて選択することができる。外国はそのような制度になっています」

 正式に参加を決定したことで話題になっているTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉では、アメリカやオーストラリアなどが乱獲を招くとして補助金制度の撤廃を求めていたが、日本や新興国は反発。昨年の10月に日本の補助金制度は基本的に維持される見通しとなった。現在、行政が出している漁業補助金は年間1400億円である。

「補助金廃止を反対する理由に、東日本大震災の被災地域の漁業復興に支障が出るからだという人間もいますが、補助金を出すことによって10のうち1しか獲らなくても生活できてしまえば、あとの9の時間は努力しない。真面目な産業は育ちません。今の補助金は没落する漁業をつくっています」

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 こうして見る限り、日本の漁業が発展するためには現在の補助金を廃止すべきなのは明確である。それがなぜできないのか。小松さんは行政の中にも「このままではいけない」と思っている人間は山ほどいるだろうという。

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