File2 漁業復活の処方箋 小松正之

第2回 なぜ日本は問題先送りの漁業補助金を撤廃できないのか

「しかし、理解しているのと、それを実行に移すのはまったくレベルの違う話。改革には抵抗勢力がつきものです。補助金を撤廃するためには3つの抵抗勢力があるのです」

 第1に政治家だ。彼らは現場の人間の要望に応じて補助金を出すことで、自分の評価につながる。補助金は漁業関係者の票を獲得するための切り札となるのである。2つめは行政自身。抵抗勢力にあいながら制度を変えることより楽に評価が得られるため、目先の手柄にとらわれて補助金を配る。そして、最後に漁業協同組合と年老いた漁業者だ。漁業が衰退しているなかで、漁協にとって補助金は組織維持のために欠かせない収入源であるし、漁業者も補助金がなくなれば操業が立ち行かなくなる。老年の漁業者は、自分たちは長くはないから、その間はいまのまま漁業を続けたいと考え、漁業の発展は二の次になってしまうのだ。

「現場で『息子や娘には継がせない』という言葉をよく耳にしますが、はっきり言って無責任です。海はみんなのものです。魚が減っていることに危機感を持たず、次世代に資源を残そうと考えない人間に漁業をやってほしくはない。そのためにも補助金は撤廃するべきなのです」

 残念ながらこうした3つの抵抗勢力に立ち向かうだけの知識と勇気、情熱を兼ね備えた人間となると、ほとんどいないのが現状だと小松さんは言う。だとすると、このまま日本の漁業が衰退するのを見ていることしかできなくなるわけだが、こうした状況を打破するために、小松さんが先導するかたちで新しい取り組みを始めている自治体がある。

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つづく

中川明紀

(撮影:森山将人)

聞き手・文=中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。インタビュー記事を中心に、雑誌や電子出版物で活躍している。Webナショジオでは連載「世界魂食紀行 ソウルフード巡礼の旅」を執筆。