開発が進む人造肉、地産地消で支持は得られるか

人造肉を地産地消で

 ファン・デル・ウェーレとトランパーの論文は、こうした批判的な意見に応えるものだ。2人は、先進技術の推進者と「ロカボア(地元の食材だけを食べる人々)」を、両者が気に入るような培養肉を提案することで結束させようと考えている。

 食肉工場の脇で暮らすブタは、単なる幹細胞の供給源ではない。彼らは、現代の食習慣の中で多くの人が見失っている食物連鎖とのつながりを、私たちに意識させてくれる存在でもある。「この方法なら問題は一気に解決し、理想が現実味を帯びてきます。そこでは肉が食べられ、動物たちはもはや苦しまない」と、ファン・デル・ウェーレは初期の論文に書いている。

 2人が提唱する製肉法は、ブタから採取した幹細胞を、徐々に大きなフラスコへ移し、最終的に容積20立方メートルという最大級のバイオリアクターがいっぱいになるまで増殖を繰り返す。そこへ酵素を加えて細胞を凝集させ、どろどろになった液体を圧縮して、グラインダーでひき肉にしてから、パテに成型する。この作業を1回行うのに、約1カ月の時間がかかる。

 トランパーの試算によると、バイオリアクター1基で2500人分の肉が供給できるという。ただし口にできるのはひき肉だけで、量は1日30グラムにも満たない。近年、減少傾向にあるとはいえ、アメリカ人はその10倍は肉を食べている。

 このプロセスでは肉の繊維はもちろん、ステーキなど到底作れない。ファン・デル・ウェーレとトランパーは既存の技術で実現可能な方法を模索してきたが、それでも現時点では費用がかかる。一番の問題は、幹細胞を培養するための特殊な成長培地で、まだこれには動物の胎児から採った血清などの材料が必要なのだ。

 成長培地が現在の価格のままだと、培養肉の製造には少なくとも1ポンドあたり240ドルという経費がかかる(100グラム約5300円)。これでは高級スーパーで売るとしても高すぎる。ファン・デル・ウェーレとトランパーの論文にはこうある。「経済的に成り立つかどうかが、培養肉にとって最大の課題となるかもしれない」

(文=ロバート・クンジグ/訳=北村京子)