開発が進む人造肉、地産地消で支持は得られるか
食肉は将来、どんな風に作られるようになるだろうか。
ここに一つの未来図がある。
肉は、巨大なバイオリアクター(生物反応装置)で幹細胞を培養して製造される。幹細胞は、この食肉工場の脇でのんびりと暮らすブタから採取したものだ。ときおり技術者がブタに針を挿して検査し、肉好きな村人がブタと触れ合いながら、培養肉を買っていく・・・。
この未来図は、学術誌『トレンド・イン・バイオテクノロジー』の6月号に掲載された論文に、少々アレンジを加えたものだ。論文の執筆者はオランダ、ワーヘニンゲン大学の哲学者コル・ファン・デル・ウェーレと生体工学者ヨハネス・トランパー。彼らは、現代の食肉生産が、地球や家畜そのものに与える影響を懸念している。
地球と家畜を守りながら、肉好きな人が食べてくれる代替品を提供する方法として、彼らが提唱するのは、培養肉を地域ごとに小規模生産することだ。
工場と化した養豚場でブタを育てて食肉処理する今の生産方法のかわりに、「ブタは生きた細胞バンクになる一方で、私たちに動物、つまり食べ物の源と常に触れあう機会を提供してくれるのです」と、ファン・デル・ウェーレは電子メールを通じて説明した。
ひと言で言うなら、我々は自分たちのブタ(あるいはウシやニワトリ)を飼いながら、同時にその動物たちを食べることができるというわけだ。
各国で進む人造肉開発
食肉が不評を買う一方で、代替肉には注目が高まっている。世界中で食肉の需要が急増するなか、国連食糧農業機関(FAO)からビル・ゲイツにいたるまで、誰もがこぞって訴えるのは、「食肉はじきに消え去る運命にあり、少なくとも現在の製造方法を続ける限り望みはない」ということだ。
ゲイツは、米国ミズーリ州の新興企業ビヨンド・ミート社に出資している。同社が作る人造鶏肉は優秀で、ニューヨーク・タイムズ紙の専門記者も本物と間違えたほどだ(鶏肉はブリトーの具として供された)。ビヨンド・ミート社の製品は、大豆とアマランサスを原料に、極秘の特殊加工をほどこすことによって、鶏のむね肉が持つ繊維の感触を再現している。