「国際チームの研究報告は、現在の環境破壊や乱獲が進むと漁業ができなくなるくらい資源が減少するから、問題を解決していこうという警戒を促す意味が込められたものです。過去のデータからの単純な予測ですから、私自身はそこまでの極端な悪化状況になるとは思っていません。実はノルウェーやアイスランド、アメリカ、オーストラリアなどの漁業先進国といわれている国では、すでに対策が講じられていて、資源を回復している国もあります。しかし、日本はそれができず、漁獲量はピークだった1982年の1282万トンから、2012年には484万トンにまで落ち込みました。前年の東日本大震災の影響もあるとはいえ、約3分の1にまでなってしまった。ノルウェー・トロムソ大学の教授の分析によると、OECD(経済協力開発機構)諸国の中でも最悪の減少率です」

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 1972年から1988年まで、日本は世界最大の漁獲量を誇っていたが、現在(2011年)は養殖を除くと中国、ペルー、チリ、アメリカ、インドネシアなどに次ぐ8位。30年で3分の1に減っているのだから、シンプルに計算すると、あと15年で日本の漁獲量は0になってしまう。小松さんの言うとおり“惨たんたる状況”だが、かつて漁業を牽引していた日本がこのような状況にあるのはなぜだろうか。

「実効ある資源管理をしていないからです。日本が資源管理をすべき200海里内において、主にまき網漁などでイワシやサンマ、サバ、アジ、イカを獲る沖合漁業は、ピーク時の1980年代半ばの約700万トンから220万トン(2012年)に、漁師の85%が従事する小型船による沿岸漁業も227万トン(1985年)から109万トン(2012年)にと、いずれも大幅に減少しています。たとえば、マイワシの漁獲量などは1988年に450万トンを記録しましたが、その後は急激に獲れなくなり近年は100分の1の3~4万トンまで減るという有様です。現在(2012年)は13万トンに少しだけ回復しましたが悪化状態には変わりありません」

 マイワシにおける直接の原因は環境の変化によるものだと言われている。レジームシフトといって、地球の軸が変化することで北極から冷たい空気が流れてきて、寒流が強くなるなどして海洋生態系に影響をおよぼすものだ。つまり、これは日本近海に限ることではない。実際、アメリカなどでもイワシの漁獲量は減っているのだ。

 しかし、漁業における問題は別のところにあると小松さんは続ける。

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