第92話 オオカミなんて、ひと蹴りひとパンチ?!

「はい、そこで食べました!」

「美味しかったです!」

 と言わんばかりの、オオカミたちの狩りの痕跡に、ゾッと青ざめた私は、逃げるように犬たちの元に戻ってきた。

 ところが犬たちはというと、のんびりとあくびをしていて休憩中。

 血相を変えている私の様子を見ても、きょとんとしていた。

「え? あなたたち、におわないの?」

「この血のにおい、この獣のにおい」

「におわないの???」

 私は不思議に思った。

 ムースが襲われた血の痕も、食べ残した毛の散乱も、オオカミたちの足跡も、すぐそこにあるのに、嗅覚の鋭い犬たちがまったく異変に気づいていないのである。

 もしかしてこの犬たちは、人間の世界で飼われていることによって、すっかり平和ボケしてしまっているのだろうか?

 もしもそうならば、人間よりもいち早く危険を察知することができると言われている犬の能力を、当てにすることができない。

 私は彼らを見つめて、うなだれながら言った。

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