第6回 5兆度!の宇宙が始まった頃を再現してみた

 それにしても、人類が行いうる実験で宇宙開闢から1マイクロ秒(10のマイナス6乗秒)後くらいの状態が再現できるとは。なんというスケールだろう! この時点で、宇宙のインフレーションがあったとされる10のマイナス36乗秒の時期は過ぎており、すでに「インフレーション後」であることに留意。急膨張の直後の宇宙の状態にまで、我々は「実験室」で迫ることができるということだ。そもそも、クォークがバラバラになるなど一昔前の一般書レベルの知識しかなかった自分としては、本当に目から鱗が落ちるような話だ。

 現在のエネルギーフロンティアであるLHC加速器と2つの検出器を見学し、主に3人の研究者に折り入って話をうかがったところで、今回のCERNの訪問記はおしまい。

 最後になるが、特に印象深かったのは、三方それぞれ、違った立場にありつつ、背景にかなり共通するものを感じたことだ。

 それに気づいたのは、大山さんがご自分の研究史を語った時。

「実は、修士の時に、私、QGP、クォーク・グルーオン・プラズマに出会ったんです。アメリカのブルックヘブン国立研究所というところで、RHIC(リック)という加速器があって、PHENIXという実験をやると。それがALICEと同じようなクォーク・グルーオン・プラズマの実験だったんです。私の場合、もともと物理だけじゃなくて、テクノロジー関係、エレクトロニクスとかに非常に興味があったんですね。PHENIX実験でも、まずそういう仕事から始めて博士論文も書いたところで、次世代の加速器、つまりLHCで新しい実験を始めると聞きました。検出器やエレクトロニクスの開発もできるというのに惹かれて、ドイツのハイデルベルク大学に来て、今に至っています」

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