第6回 山岸明彦 火星での生命探査計画(後編)

 では、有機物と膜をどうやって見つけるのか。
 実は、それらを見分けられる、特別な試薬があるんです。たとえばDNAなど核酸があると色がつく試薬。酵素反応があると色がつく試薬。脂質膜があると色がつく試薬というのがあります。そういうものを使って、軒並み調べていくわけです。

 ただし、地球の生き物はどれもDNAをもっていますけれど、火星の生き物はDNAをもっていない可能性もあります。DNAがなくて見つけられないというのは困るので、DNAをもたない生き物も調べられることを大腸菌を使ってテストしました。

 大腸菌は、ときどき分裂し損なって、DNAの入っていないとても小さな細胞をつくることがあります。我々が使う試薬では、このDNAのない大腸菌を緑色に発光させることを確認しました。もしこの大腸菌が死んでいた場合は赤く見えることも確認しています。

2020年代、日本のロケットで火星へ!

 それからもう一つ、生き物がいない場合も想定しています。手ぶらで帰ってくるのはシャクですから、有機物があるかないかも調べる計画です。有機物が宇宙にたくさんあることは、もはやわかりつつあって、それは今も地球にたくさん降りそそいでいます。「宇宙塵(うちゅうじん)」と言って、宇宙の塵なんですけれど、有機物がたくさん入っていることがあります。ものによっては隕石にも、有機物が数%入っていることがありますね。

 こうした宇宙塵や隕石が火星にぶつかっていれば、有機物はあるはずであると。ないとしたら、その理由を考える必要がある。だったら有機物も探そうよ、ということにしています。さきほど生きている大腸菌を緑色にした試薬は、死んだものにかけると最終的には赤く見えると言いました。これは生き物でなくても当てはまります。有機物があれば赤く染まります。有機物の検出にはこれを使うつもりです。