第6回 山岸明彦 火星での生命探査計画(後編)

 人間の場合、水が70%です。次に多いのはたんぱく質です。あとは核酸などでできているのですが、これらをさらに元素までかみくだいてみましょう。すると、主な成分は酸素と炭素と水素と窒素となり、その他さまざまな元素でできていることがわかります。

水を含むヒトの元素組成(提供:山岸明彦)(画像クリックで拡大)

 このうち酸素と水素は水の成分ですから多いのは当然です。さらに水分を抜いて、すりつぶして調べると、カルシウム、カリウム、硫黄、塩素、ナトリウム、マグネシウムという成分が出てきます。これらは何が由来かというと、海水なんですね。かつて我々の祖先が多分海の中に住んでたときに使っていた元素を、そのまま地上まで持ち上がっているんだと思います。だから、我々の体の多くは海水でできている。

 だけど、よく見ると海水だけでは我々の体は出来上がらない。もっといろいろな成分を含んでいます。それらは何かと言うと、実は宇宙にどこでもある元素なんです。「生き物はとても不思議な、まれな存在である」と思いたい気持ちが、我々にはあります。その気持ちはよくわかるんですけれど、すりつぶして成分を見ると、どうやらそうでもない。

 我々の体をつくっている水素、炭素、酸素、それから窒素。これらは全部、宇宙で最もありきたりの元素なんです。我々は元素という観点で見ると、残念ながらあまり不思議な存在ではありません。ほかにも人間は、体内で硫黄やリンを使っていますが、硫黄も宇宙にそこそこある成分ですし、リンは少ないですけれど、わざわざ使っているのには何か理由があるのでしょう。