第23回 ラオス料理は幸福のおすそ分け

 「当時は神奈川の大和市に難民を支援する大和定住促進センターがありました。みんな最初はそこに何カ月か住んで、日本語を教わったり仕事を紹介してもらったりするんです。神奈川中部、東京西部にラオス人が多いのも支援センターがあったから。在日ラオス文化センターは閉館した支援センターの代わりとして設立したのです」と新岡さん。いまのセンターは在日ラオス人の拠りどころになっているという。

 久永さんは来日した頃の思い出を話してくれた。「支援センターでは、みんな庭でミントやレモングラスなどの香草を栽培していました。食堂で食事が出るんですが、やっぱりラオス料理が恋しい。育てたミントでラープをよくつくりましたね」

 久永さんの言葉を受けて「私が最初に知ったラオス料理がラープでした」と言うのは、同協会の監事・伊藤裕子さん。かつては大和定住促進センターの職員だったそうだ。「日曜に子どもを連れて様子を見に行くと食事を振る舞ってくれるんです。『ごはんは食べましたか?』と言って。そこで食べたラープはすごく美味しかった。うちの子どもはラオス料理が大好きなんですよ」

 「ごはんは食べましたか?」という言葉は、ラオス人の親しみを込めた挨拶なのだと伊藤さん。「日本人が『元気ですか?』と聞くのと同じ。食べてなければもてなす。たくさん食べて満足して帰ってもらいたい、というのがラオス人の気持ちなんです」と久永さんも言う。

 そうか、シーパンドーンさんや新岡さんが声をかけてくれたのはそういうことだったのか。そして、来客をもてなすときに必ずつくるラープは、ラオス人の相手を思うやさしい気持ちがつまった料理なのだ。“幸福”をおすそ分けするのだから。

久永さん(左)と佐藤さん(左から3人目)。久永さんのお嬢さん(右)は日本生まれだ。後列のお坊さんはラオスから3カ月ごとに交代で来日しているという

中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮