「政府も農協も企業も個人も、日本全体で農業のありかたそのものを根本的に見直していくことが重要なのです」

 そう語る柴田さんだが、それでも日本の自給率は5割になるのがせいぜいではないかと予測する。「たとえば人口問題。世界の人口は増えていますが日本の人口は減り続けています。しかも15歳から64歳までの労働人口は10年以上も前から減少している。働き手は消費の大きな担い手でもあります。消費の担い手が減ると需要はのびませんし、働き手はきついところ、もうからないところから減っていきますから、就農者を維持するのがより大変になってくるでしょう」

 農地や水資源の問題もある。日本がいま輸入している3000万トンの穀物を日本で生産するとなると新たに1200万haの農地を開拓しなければならないという。また、現在1000万トンの食料を生産するのに約600億トンの水が必要だが、日本で恒常的に使われている水量は800億トンほどであり、新たに3000万トンの食料を生産するための水を確保するのは非常に難しい。

「問題は山積しています。『成長戦略』といっても、まずは安定が重要です。そのためには、とにかく農業をしっかりと立て直すことです。中国や東南アジアが豊かになってきたというのは、世界の食市場が広がるということ。それは危機を招くいっぽうで輸出のチャンスにもなる。ここに日本の食をブランド化して輸出していくことで需要が伸び、日本農業の活性化にもつながるのです」

 近年、和食は世界的なブームになっている。農林水産省によると2013年の農林水産物輸出額は前年比22.4%増の5506億円で過去最高になったという。円安もあるが、欧米やアジア圏などでは実際に日本の食材や日本酒の需要が高まっているのだ。こうした追い風を機に、2050年の人口90億人時代に備えるために自国の農業を足下から見つめ直し、自分たちも積極的に消費して国産食料の価値を高めていくことが大切なのではないだろうか。

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おわり

中川明紀

(撮影:森山将人)

聞き手・文=中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。インタビュー記事を中心に、雑誌や電子出版物で活躍している。Webナショジオでは連載「世界魂食紀行 ソウルフード巡礼の旅」を執筆。

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