標高の高い森林限界まで来ると、風が容赦なく吹きつけてきて、気温もぐっと下がってきた。

 マッシャーは登り坂になると、橇を降りて押して上がらなければならない。

 しかも、ペースの速い犬たちの足についていかなければならず、私の心臓は全力回転。山を登る蒸気機関車のようにかっかと燃え、頭から蒸気が上がるほどに汗だくになった。

 だから、ぐっと下がった気温の低さなど、かえって気持ちがいい。

 けれど、問題はそのあとである。

 再び下り坂になって、橇に飛び乗ることになると、燃えていた体が一気に冷めて、今度は凍えてしまうことが目に見えていた。

 実は、そこが犬橇の長距離走行の難しいところである。

 橇に乗っているときは、運動量が少ないために寒さを感じやすく、しっかりと防寒服を着込んでいなければならない。

 が、犬たちと同じように自分の足を使って走ったり、登ったり、橇を押し上げたりすると、たちまち運動量が増えて、防寒服を着ていては暑過ぎるほどになってしまう。

 その調整が、私にはなかなか上手く出来なかった。

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