第5回 神の素粒子の次なるターゲットとは

 ヒッグス粒子の発見で標準模型が完成した、もしくは、確証を得た、というふうに報じられことが多いけれど、発見した当の本人たちは、むしろ、標準模型を超える「新しい物理」に向かう始まりだと捉えている。

「ヒッグスっていうのは、結局、標準模型の中に質量という概念を記述するために導入されたんですね。そのおかげで素粒子が質量を獲得して、標準模型は成功したかのように見えるんだけども、何か悪いものを全部ヒッグスに押しつけているように感じるんです。そもそもヒッグス粒子の質量が約125GeV(ギガ電子ボルト。質量をエネルギー換算であらわすのは素粒子物理では普通)だというのも、標準模型の知見だけで計算すれば、すごく不自然な計算をしなければならないんです。それをしないでうまく説明するには、超対称性などが見つかるとよくて──」

 標準模型は50年も前からひとつのスタンダードとして確立しており、大枠の説明として間違いなかろうと多くの物理学者が思っていた。しかし、それだけでは済まないこともすでに織り込み済みで、次のステップは、ヒッグスをよく理解した上で、標準模型の粒子にさらにパートナーが存在する、「超対称性」が見つかること、らしい。そのためには、エネルギーフロンティア実験で、既知の素粒子と対をなす超対称粒子が見つかればよい。

超対称性理論は通常の素粒子と対をなす超対称性粒子を予測する。(画像提供:高エネルギー加速器研究機構)(画像クリックで拡大)