第5回 神の素粒子の次なるターゲットとは

「追い求めてきたものがこうやってちゃんと自分が関与している実験で見つかったわけなので、それはただ嬉しかった、鳥肌がたったという感覚ですかね。検出器を組み立てて、うまく働いて『よっしゃー!』と思うのとは全く違う喜びです。これ、目先の目標ではなくて、もっと長期的な目標を達成できたわけなので、その達成感はすごいですよね。でも、その先がやはりあるんです」

 戸本さんは、まだまだ現役研究者として、ATLAS実験を切り盛りしていく立場なのである。RUN2も順調なら2015年に始まる。エネルギーが14TeVにまで上がり、取るデータの量も4倍に上がる。そこで挑む「アンノウン・アンノウン」とは?

「やっぱり、ヒッグス粒子はこれまで知られていた素粒子、クォーク、レプトン、さらに力を媒介する粒子、といったカテゴリーとは違って、特殊な粒子なわけです。なので、人類はほとんど知見がないわけですね。その性質を理解するということが、大事だと。ヒッグス粒子の発見で、標準模型の粒子がすべて見つかったとよく言われますが、むしろ、ここからは、もっとたくさんヒッグス粒子を作ってみて、性質を理解しなければならないんです。それによって、標準模型のさらに向こうにある新しい素粒子物理、新しい物理の展開の突破口になるだろうと」

 新しい素粒子物理、いや、新しい物理、と戸本さんは言った。

 実に大きな話である。