第5回 神の素粒子の次なるターゲットとは

 ATLAS実験で得られるデータは、膨大だ。

 1秒間に30PB(ペタバイト)。一般的に流通しているハードディスクなど数TB(テラバイト)クラスだから、そこに記録しようとしても0.1秒も持たない! という量。

 おまけにヒッグス粒子が出てくるイベントは、100秒間に1度ほどしか起こらないと予想されていた。興味深い現象が起きた時にだけその部分の衝突の記録を残しておくのが堅い発想だ。

 では、いつどういう時に残しておくのがよいか。人間がいちいち決めていては追い付かないので、何か条件を設定しておいて、それに合致した時に保存しておくことになる。その条件が、トリガーだ。

 ヒッグス粒子を探す時には、ヒッグス粒子の崩壊に特徴的な、2光子イベント(崩壊して光子2つになる)、さらに日本チームとの関わりが深いミューオン検出器で検出されるミューオンが4つ飛びだしてくるイベント(崩壊してミューオン4つになる)に対応したトリガーが使用された。

 というわけで、組み立てたミューオン検出器がきちんと働き、設定したトリガーを出せると確認するのは大事なステップだった。運転開始の2008年にそこまで進み、しかしLHC加速器本体の液体ヘリウム漏れ事故で、実験本番が2009年末にずれ込んだのは前述の通り。

 そして、RUN1の実際の運転が始まり、ヒッグス粒子の発見に至る。

金色に見える右側のパネルがATLASのミューオン検出器。(写真クリックで拡大)