第4回 神の素粒子を検出するということ

 なぜかは、前にも述べたけれど、ヒッグス粒子をひとつ見つければそれで「発見」と言えるものではないからだ。5σ(99.9999パーセントの確からしさ)を実現するために、ゆっくりと証拠が積み重なっていくものだし、それ以前の問題として、ここにいて「今、ヒッグス粒子が出た」と確実に分かるものでもない、という。

「ヒッグス粒子かもしれない、ということは分かるんです。例えば、2光子事象(ヒッグス粒子の崩壊の過程で2つの光子を出すこと)が起きて、それが想定されるヒッグス粒子に近い質量ですと、今のはそれっぽいなあ、とか思うくらいですね」と説明してくれた研究者が述べていた。

 新しい粒子が見えているのかどうかは、「2光子事象」が、既知の粒子の反応で起きているとは考えられない統計的なズレを検出しなければならないし、それがヒッグス粒子かどうかは、さらにデータを分析してスピンなどの素粒子の属性を割り出さなければならない。そういった解析を担当した人なら、「5σで新粒子発見!」とか「新粒子の性質から、探し求めていたヒッグス粒子に違いない」などと、発見の瞬間を味わえたかもしれないが、それは研究者の中でもごく限られた人たちの特権だっただろう。

ヒッグス粒子が2つの光子(黄線)に崩壊する事象と観測の様子。(画像提供:ATLASグループ)(画像クリックで拡大)