第1回 人類史上最高のエネルギー状態を作りだす研究所へ

LHCのレイアウト。青と赤で示された部分がビーム管で、交差する部分で衝突でき、それぞれの場所に検出器が設置されている。(画像提供:CERN)(画像クリックで拡大)

 常に曲がっているわけではなく、まっすぐなところと曲がっているところが交互に配置してある。まっすぐに進み曲がり、またまっすぐに進み曲がる、というのを8セット繰り返して1周。

 最初の地点から300メートルほどトンネルを奥まで歩くと、曲がっている部分に到達した。それまではどちらがリングの内側かも分からなかったので、やっと頭の中で巨大なリングの一部に接しているのだと実感が湧き、その中を陽子がぐるぐる回る様に思いいたした。

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 光速の99.999999%もの凄まじいスピードだ。そして、そのリングの途中、4カ所に検出器、ATLAS(アトラス)、ALICE(アリス)、CMS、LHC-Bがあり、それぞれの目的に応じた実験をしている。ヒッグス粒子の発見に寄与したのは、ATLASとCMSだ。このうちATLASは、日本から参加者が多い。今回の訪問では、このATLASについて多くの時間を割いた。また、ちょっと毛色の変わった実験(後述)をしているALICEにも興味を持ち、取材した。

 実はこのとき訪れた地下トンネルはALICE実験の検出装置のすぐ近くで、陽子を衝突させる前にビームを収束させる「超伝導4極マグネット」もあった。これは通常の双極マグネットの3分の1ほどの長さのコンパクトなもので、表面にKEKのロゴと日の丸のマークが描かれている。全部で32台あるこういった収束用マグネットのうち、16台は日本が作ったものだ。

ビームを収束させる日本製の「超伝導4極マグネット」。「KEK」は日本の「高エネルギー加速器研究機構」の略称。(写真クリックで拡大)