第1回 人類史上最高のエネルギー状態を作りだす研究所へ

 ぼくが訪れたのは2014年3月のなかば。翌15年から始まる「第2期実験(RUN2)」に向けて装置のアップグレードの実施中だった。運転中の加速器は放射線が強く、近づくことができないのだが、運転を止めている時期なら、加速器本体や検出器が設置されている地下トンネルまで下りることができる。まさにそのチャンスだった。

 そこで、今回は、目下、人類がこれまで到達した中で、最も高いエネルギー状態を見ることができるエネルギーフロンティア、LHC加速器とその実験について素描する。また、参加している日本の研究者たちに話をうかがうこともできたので、そのことにも後で触れたい。

 LHC加速器は、大型ハドロン衝突型加速器という名の通り、光速近くにまで加速されたハドロン(クォークなどからなる複合粒子)、この場合は、陽子のビームを衝突させるものだ。

 全周27キロという巨大さについてよく引き合いに出されるのは、東京の山手線。環状運転でぐるりと一周すると34.5キロなので、そこにLHC加速器を持ってくると、同尺度の地図の中にいい感じに描ける。自分の住む町の地図の上に、ざっくりと直径10キロほどの円を描いてみてもいい。スケール感が分かるはずだ。

 2009年11月から2013年2月まで運用された(RUN1、いわば第1期の実験期間)の成果として、半世紀前に理論的に予言されていたヒッグス粒子の発見を高らかに宣言した。素粒子理論の標準模型(Standard Model)、まさにスタンダードな理論から導かれる素粒子の中で、発見されていない最後の1つだったこと、ほかの素粒子とは肌色が違うものだということもあって、大きなニュースとなった。そのニュースの「現場」が、ここ、である。